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2025.04.4

オーガニックお仕事座談会:有機認証に関わる従事者にお仕事や今のオーガニック事情について聞いてみた

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有機JASの登録認証機関は全国に50以上ありますが、JONA(日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)はその中でもトップクラスとなる年間600件以上の認証を手掛けています。オーガニックに関わるお仕事の実際について、JONAで働く3名の方にお話を伺いました。

協力:JONA(日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)/文・川原舞子

川上希里佳さん
有機認証スタッフとしてのキャリアは8年。国内だけでなく、海外の認証も担当

仲樹乃子さん
有機認証スタッフとして10数年のキャリアを持つ。オーガニックレストラン認証も担当

大澤ダニエラさん
2024年からJONAでの仕事をスタート

認証団体としてのお仕事

お仕事内容についてわかりやすく教えてください

ひとことで言うと法律に関わる仕事です。「有機」や「オーガニック」として商品を流通させるためにはルールがあり、それに合致しているかどうかを確認しています。「そんな法律があるんですか?」とおっしゃる方も多く、JAS法の存在が、まだあまり知られていないと感じます。

有機JASマークをつけられるかどうか審査する仕事、と説明するとイメージがつきやすいでしょうか。書類審査から始まり検査員の方に実際に現場を見てもらい、認証に至るまで最低でも3ヶ月、長いと半年くらいの期間がかかります。その一連の流れを裏から支える仕事なのですが、申請から認証までにかかる期間の長さに驚く方も多いですね。

私も驚きました。まだ仕事を始めて日が浅いのですが、「有機JASマークをつけるのって大変なんだな」と感じました。

オーガニックに携わるきっかけ

どんなきっかけで、このお仕事を選ばれたのでしょうか。

学生時代フランスに留学した時、普通のスーパーに「bio」の商品がたくさん並んでいるのを見て、オーガニックに興味を持つようになりました。あと、美味しいものを飲むのも食べるのも好きなので。

母が食生活を大切にする人で、オーガニック食品を選んでいました。その影響もあって大学では栄養学を学び、卒業後は調理の現場で働いていたのですが、デスクワークの方が向いているなと思って。軽い気持ちで入ったのですが、もう10年以上になりますね。

高校生の時のダイエットがきっかけで自分の食を見つめ直そうと思い、オーガニックに興味を持ちました。大学は農学部に進み、卒業後は青果市場を運営する会社で働いていたのですが、もう少し地球や環境に配慮した食品にダイレクトに関わっていきたいな、と考えて転職しました。

JONAでは海外に日本のオーガニック商品を広めていくため、ドイツで開催されているオーガニック食品国際見本市「BIOFACH(ビオファ)」に出展しています。

ちょっと気になるオーガニックの誤解

オーガニックに関して誤解されているな、と感じることはありますか。

認証を受けるにあたって、残留農薬の有無などを分析している、と思われていることは多いですね。検査員は実際に農場や加工場へ行って、オーガニック基準に適合しているかを確認しているのですが、検査は基本的に観察とインタビューで行います。

無農薬なんでしょ、ともよく言われます。有機栽培であっても病害虫や雑草の対策は必要で、有機JAS規格では使っても良い農薬が厳密に決められています。私たちの仕事はそれにのっとって検査するわけですが、有機JASマーク=無農薬ではありません。

オーガニックの商品をこれから始めたいなら

お買い物をされる際には、どのようなオーガニック商品を選んでいますか?これからオーガニックの食品を選びたいという場合、何から始めるのがいいですか?

調味料から始めるのがおすすめです。調味料には有機JAS認証を受けている商品が多くて、選択肢が多いんですよ。一般のものと比べたら少し高いかもしれませんが、味の決め手になるし、毎日使うものなので。

私は野菜や果物ですね。自分で料理をすると、やっぱり「オーガニック」のものは美味しいと感じます。切ってそのまま食卓に出すだけでも食べられるので、小さいお子さんがいらっしゃる方にもおすすめです。私は買うお店はだいたい決めていて、信頼できるお店を近所で見つけられると、生活に取り入れやすいですね。

私はシンプルに美味しいもの。最近食べて気に入って、友達にもすすめているのが、オーガニック専門店で量り売りしているドライフルーツです。オーガニックのものは、少しの量でも満足できる気がします。

現時点で感じる課題点

オーガニックの魅力と課題。もっとこうなったらいいのに、などと思われることはありますか?

私はワインが好きなのですが、ナチュラルワイン好きな友達と一緒に飲むと、EUの有機認証マーク「ユーロリーフ」はみんなよく知っているんです。「このマークがついてるワインは美味しい」って思われているのが、ちょっと悔しいですね。有機JASマークもそんなふうに「このマークがついてるのは美味しいよね」と思ってもえらえるといい。安心なだけじゃなくて、美味しくて安心だよね、という風になっていくといいなと思います。

もっと認証を受ける商品が増えて欲しいのですが、事業者さんにはそれなりの費用負担がかかります。補助金など、認証のための費用が抑えられるような仕組みがあればと感じることはありますね。それから、オーガニックの商品を買えるお店がまだまだ少ないので、取り扱いのある売り場が広がって欲しいです。

自分自身の目標でもあるのですが、いろんな生産者・事業者さんがいらっしゃるので、その方々がどんな思いで作ってるかをもっと知りたいし、皆さんに知っていただきたいです。有機JAS認証を受けている事業者さんには、本当に魅力的な人が多いんですよ。

海外に日本のオーガニックを広めていければとも思いますね。同等性を使って輸出している品目は日本茶やお米が多いのですが、これからは日本酒に注目が集まると思います。日本の「伝統的酒造り」がユネスコ文化遺産に登録されたので、これを追い風にしていきたいですね。

「食べるために作る。もちろんオーガニックで」をコンセプトに、2007年から親子農業教室を開催。神奈川県愛甲郡愛川町にはJONAの実験圃場があり、米づくりに取り組んでいます。

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