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2024.05.13

オーガニック給食をリードする注目地域の取り組み

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全国で進むオーガニック給食。キチラブ編集部が注目するのは、兵庫県豊岡市と千葉県いすみ市です。
両市に共通するのは、給食の提供そのものが目的ではないこと。水田の生物多様性の保全や、地域の環境と経済性の向上を目指すなか、オーガニック給食への取り組みも進んでいます。

協力・写真提供:兵庫県豊岡市、千葉県いすみ市
:のなかあき子


〈キーワードは環境を育む「お米」〉

豊岡市といすみ市における取り組みは、環境に配慮した農法で栽培される「お米」からスタートしました。学校給食で提供されることにより、市場価値も高まり、生産者の増加にもつながります。

給食に“コウノトリ育むお米”を小学生が市長に直談判

兵庫県豊岡市

地域:近畿地方 人口:7万5919人(2024年3月末) 市立学校数(生徒数):小学校22校(3601人) 中学校9校(1993人)(2024年4月)

有機野菜農家と共に給食タイム

コウノトリも住める環境作りが原点

 豊岡市は2016年4月、学校給食での100%減農薬米の提供を実現した。この取り組みの背景には、かつては日本各地の水田で見られたコウノトリの野生復帰の取り組みがある。1971年に日本の野外で暮らすコウノトリは絶滅。農薬などによる環境破壊が、水田の多様な生物と、生物をエサにするコウノトリの命を奪った。
 多様な生物が暮らせる水田の復活を目指し、豊岡市では「コウノトリ育む農法」が広まる。農薬や化学肥料に頼らず、美味しいお米と多様な生物を同時に育む農法だ。2005年からは、兵庫県による人工繁殖したコウノトリを野生に戻す取り組みも始まった。

コウノトリを育む水田のお米が、子どもたちの身体も育む

100%無農薬の提供を目指して

 市が給食への減農薬米の導入を決めたのは2007年。コウノトリの観察学習に参加した小学生の提案がきっかけだ。コウノトリを増やすには、多様な生物が生息する水田を広げる必要がある。お米の消費が増えれば実現できるはず。小学生は学校給食への導入を市長に直接提案し、市長は可能な範囲での使用を約束。翌年から減農薬米の一部提供を開始し、2016年には全量達成を実現した。
 2023年、市は「オーガニックビレッジ宣言」を発表し、次の目標として無農薬100%の実現を掲げた。2024年度は12の生産者が半年分相当の約50トンを収穫予定。3年後には全量を無農薬米にする計画で、有機野菜の提供も進める。

給食の残食率も低下した


給食提供の有機栽培米 わずか3年で全量達成

千葉県いすみ市

地域:関東地方 人口:3万5075人(2024年4月) 市立学校数(生徒数):小学校9校(1318人)   中学校3校(755人)(2024年4月)

オーガニック給食が実現してから、給食の残食率が低下した

有機農業者ゼロからの出発

 有機米100%の学校給食を実現しているいすみ市。もともと稲作が盛んな地域だが、10年前までは無農薬栽培を行う農家はなかった。
 転機が訪れたのは2012年。太田洋市長を中心に、環境と経済が両立する地域を目指す「自然と共生する里づくり連絡協議会」が設立され、市や農業関係者、地域のNPOが参画。環境負荷の少ない農業の普及のために、お米の無農薬栽培の推進を開始した。
 初年度は3人が挑戦するも失敗。有機稲作の第一人者である「民間稲作研究所※」代表の稲葉光國氏による研修を経て、2014年には約4トンの収穫に成功した。そして農家の提案により、学校給食への提供を開始。1カ月分の量からのスタートだった。
                ※有機稲作の技術確立に取り組んできた民間の研究所

地元農家が生産する有機野菜も使用(年間2トン)

自然体験で水田と触れ合う

 学校給食への提供は、農家の意欲向上と安定販路の確保につながる。農家数は年々増加し、2017年には20人によって50トンを収穫、学校給食での全量化を実現した。安心なお米としてのブランド力も備わり、市場価値も向上した。
 学校給食での提供を機に、子どもたちの食農体験にも力を入れる。田んぼでの生き物観察会のほか、田植えや収穫を体験する授業も行われている。
 2024年度は、有機野菜の保育所やこども園への提供も開始する。食の安全と経済の活性化の両立を実現するいすみ市は、子育て世代の移住先としても注目されている。

有機米のネーミングは「いすみっこ」


〈企業を中心とした取り組みも進んでいます〉

自治体だけでなく、企業と学校の間でも「進化する給食」の動きが少しずつ始まっています。

「大豆たんぱく」を保護者が調理。子どもたちにも菜食の良さを伝える

三育フーズ株式会社 千葉県袖ケ浦市
 私立函館三育小学校で今年2月に開催された「給食会」では、植物たんぱく商品やごま加工品を製造する三育フーズの「大豆たんぱく」を使った大豆の唐揚げが提供された。
 同校は普段はお弁当だが、予防医学の観点から食育教育に取り組んでいる。「給食会」は保護者が子どもたちのために企画しているイベントで年2回の開催。体に良い菜食を知ってほしいという願いから、今回食材として「大豆たんぱく」をチョイス。保護者のなかには大豆たんぱくを初めて調理したという方もいて、良い経験になった、美味しかったとの声が寄せられたそうだ。

子どもたちが大好きな唐揚げに、大豆たんぱくを使用した


葉山町の町立小・中学校などで、創健社の味噌が給食に採用

株式会社創健社 横浜市神奈川区
 自然食品・健康食品の企画開発、販売を数多く手がける創健社は、「メイシーちゃんTMのおきにいり」シリーズのお菓子を、全国の保育園に納品。化調味料を使用せず、素材の持つ自然なおいしさが詰まったおせんべいなどが、子どもたちに喜ばれている。
 葉山町(神奈川県)の町立小・中学校、逗子市立逗子小学校の給食では「鹿児島合わせみそ」を採用。四国のはだか麦、九州の大豆、国産米を使用して天塩で仕上げた甘口の味噌で、加熱殺菌など熱処理をしていない。同社ではここ1年、学校給食関係の引き合いが増えているという。

給食に採用された「鹿児島合わせみそ」。自然な味のおせんべいは保育園児に人気


有機導入の給食の実例を学ぶ講習会を広島・尾道で開催

株式会社純正食品マルシマ 広島県尾道市

広島県有機農業研究会が主催

 2024年3月3日、広島県尾道市にあるベイタウン尾道組合会館にて、『地産地消と学校給食~有機農業と食育のまちづくり~』と題した講演会が開催された。この講演は、広島県有機農業研究会の記念行事として行われたが、尾道市を本拠地とする純正食品マルシマも研究会の一員であり、今回の企画運営にも主体的に携わっていた。

今治は地産地消・有機給食の先駆者

 講師として招いたのは、愛媛県今治市の学校給食で地産地消・有機食材使用を中心的に進めてきた、元今治市職員の安井孝さん(現在は退職)。今治は全国的にも有機食材を学校給食に取り入れた先進地域で、1983年の自校方式の給食調理に伴い、地元食材とともに有機食材の使用も進め始めたという。その歴史や実際に取り組んだ安井さんならではの話に、約150名の参加者は熱心に深く耳を傾けていた。

講演をする安井さん
学校関係者、生産者とのトークも





SDGsの日やお便りで楽しく食育が学べる

株式会社オーガニック・キッチン 東京都中野区

食育だよりとSDGsの日が好評

 国立大学附属の中高一貫校に弁当給食を納品しているオーガニック・キッチン。その弁当には親子で読める食育だよりを付けている。行事があったり、記念日などはそのことに関連したメニューにし、食育だよりで解説している。また、毎月最終週の月曜日はSDGsの日と決めて、この日はビーガン食(肉や魚、卵などを一切使わない)メニューにしている。例えば、バナナをフェアトレードのバナナにすれば食育だよりにそのことが書かれている。子どもたちに自然とSDGsの精神が培われていくのだ。

子どもたちから慕われる存在に

 美味しい仕掛け人たちのページの木の葉の写真を見ていただきたい。子どもたちが勤労感謝の日にオーガニック・キッチンに宛てたお礼の寄せ書きだ。美味しく、安心安全な給食をいつも持って来てくれることへの感謝があふれている。給食を納品する際、配膳などを手伝うことで子どもたちと話す機会も多い。子どもたちから「あれが美味しかったよー」「また、あれを入れてー」の声も多く、好評なのは残食の減り具合からもわかる。今後は食材の産地を子どもたちに伝えて、例えばオンラインなどで子どもたちと生産者が話す機会が出来ればといいなと思っている。

この日のビーガン給食は豆腐のキーマカレー。食育だよりは父兄にも子どもたちにも人気だ

・川原舞子、板谷 智、種藤 潤

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