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2021.03.31

プラントベースを手軽に美味しく モスが提供するから価値がある

  • 美味しい仕掛け人たち Vol.8
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プラントベースバーガーの仕掛け人

株式会社モスフードサービス
第一商品開発グループ リーダー
上村 優さん Yuu Uemura

1991年生まれ。2014年にモスフードサービスに入社。直営店舗での勤務を経て、2018年5月より同グループに配属。動物性食材を使わず、野菜と穀物を主原料に使ったハンバーガー「MOS PLANT-BASED GREEN BURGER(グリーンバーガー)」の新規開発を任され、1年半を経て完成させた。

文:種藤潤、横山玲奈/写真:山口ベン

※このページは、「Kitchen Love the Earth(キチラブ)」第9号本誌掲載の「おいしい仕掛け人」のロングバージョンのインタビュー原稿です。あわせて本誌および、プラントベースを特集した第8号特集記事もご覧ください。

→本誌第9号についてはこちらから

→第8号特集記事「Happy! ニューミート」はこちらから

「MOS PLANT-BASED GREEN BURGER(グリーンバーガー)」。
現在全国約600店で限定販売中。
上村さんは他のプラントベースバーガーを食べ歩きながら、
モスオリジナルの肉感や旨みのあるパティを表現した

フードダイバーシティがキーワード
大豆由来の原料を中心に肉の質感を表現

――「グリーンバーガー」のプロジェクトが立ち上がった経緯を教えてください。

上村 製品化のプロジェクトは、2019年春頃からはじまりました。背景には、東京オリパラ大会が1年後に迫り、日本でも「フードダイバーシティ(食の多様性)」に注目が集まり出したこと、そして、SDGs(国連が定めた開発目標)の発信が始まり、社会全体での環境配慮の意識が高まりつつあったところでした。弊社でも全社的に取り組んでいますが、その企業姿勢を社会に示すひとつの手段として、「グリーンバーガー」の開発に着手しようということになりました。そのため、製品名の「グリーン」には、環境や健康に優しいというイメージを込めています。

――2019年前には、こうした視点の商品の開発の話はなかったのですか?

 実は2015年から、健康志向の一環でお肉を食べたくないという方、カロリーが気になる方向けに大豆由来のソイパティ製品は発売していました。今回はさらにグローバルスタンダードを見据え、新しい製品に挑戦しようという考えがありました。「グリーンバーガー」では、動物性食材に加えて、仏教などで禁じられている「五葷(ごくん)=ねぎ、らっきょう、にら、にんにく、玉ねぎ」の不使用も掲げました。なので、従来のソイパティに加えて使用できない材料が増えたことは、かなりハードルが高かったです。

――具体的には、どういうところが苦労しましたか?

上村 卵白、そしてパティの主要食材のひとつである玉ねぎを使えないことでした。一般的には、パティだけでなくソースにも玉ねぎが使われ、甘味や旨味を引き出す役割を果たしています。使えなくなることで、改めて玉ねぎってすごいと思いました。その甘みを補うために、色々試しましたが、キャベツがとてもいい感じでマッチしました。

 あとは肉の食感ですね。肉らしいほぐれ感やかみごたえを植物由来の食材で出すのは難しかったのですが、こんにゃくを混ぜ込むことでうまく表現することができました。今回はパティだけでなく、バンズやソースを含めたバーガー全体で動物性食材や五葷不使用で仕上げるチャレンジをしたため、とても苦労しました。他にも、細かい部分でいろいろな工夫がありますが……説明しきれないくらいです(笑)。

――現在の味を出すまでに、どのぐらい時間がかかりましたか?

上村 約1年半かかりました。やはりモスバーガーでは商品としての美味しさ、満足感を期待されている方も多いので、その期待に応えることは最低条件でした。ただ、私の中で「これで十分では?」という水準になっても、上司はなかなかOKを出してくれませんでした(苦笑)。無理かも、と投げ出しそうになったこともありました。でも、もう少し頑張ってみよう、と、社内はもちろん、社外の協力会社さんのサポートもあり、現在の味に行き着いたときには、大きな達成感がありました。

本社内にあるキッチンでの一枚。
ここで約1年半試作を重ねた。
「上長からなかなかOKが出ず、投げ出したくなる時もありました」

プラントベースの奥深さを知り
自分の価値観にも変化が

――開発の担当に指名されたとき、どう感じましたか?

上村 正直、びっくりしました。この担当になる1年前に、現在の開発の部署に着任したばかりで、それまでは店舗勤務をしていましたから。私は元々お肉が大好きでモスに入社しましたので(笑)、そのお肉を使わないバーガーは正直想像できませんでした。本当にそんな商品ができるのか……不安でいっぱいでした。

 また、その頃はまだ「フードダイバーシティ」やSDGs、環境への配慮が今ほど社会的に話題になっていなかったですし、私自身その知識はほとんどありませんでした。ですから、商品が完成した時も、内容と美味しさには納得できたけれど、本当にお客様に受け入れてもらえるかが、やはり心配でしたね。

――実際に販売してみて、どうでしたか?

上村 予想を遥かに超えて、お客様からは感謝のお声をいただくことができました。とても印象に残っているのが、「何十年前かにモスバーガーに行っていたけれど、お肉を食べるのをやめて、お店に行ってなかった。でも、『グリーンバーガー』のおかげで何十年ぶりにお店に行くことができた。ありがとうございました」というお声でした。

――なるほど、実際に社会では『グリーンバーガー』を求めているお客様が想像よりもいたわけですね。

上村 そうです、一定数そういう反応のお客様がいましたので、この商品が社会で受け入れられる手応えを感じました。

 また、自分はお肉を食べないけれど、周りの家族や友人は普通の食生活をしていて、同じ飲食店に行くには数少ない専門のお店を探さなければならなかった方が、『グリーンバーガー』のおかげで近所のモスバーガーに一緒に行けるようになった、というお声もいただきました。ファストフードという身近で手軽な空間でこそ、プラントベースの商品を提供する価値があるのだと、再認識しました。

――それでは、上村さんの今後の目標を教えてください。

上村 一定数のお客様への手応えがある一方で、決して他の商品と比べて販売数が多い商品ではないので、『グリーンバーガー』の持つ価値を粘り強く伝えていくことが大切だと思います。

 商品自体の開発も大変でしたが、もう一つ苦労したのが、ベジタリアン、ビーガンなどの世界の奥深さを理解すること、そして伝えることでした。

 基本的に『グリーンバーガー』は、コンタミネーション(混入)の可能性があるため、ベジタリアン対応ではなく「フレキシタリアン(菜食中心だが、動物性食品も食べるゆるやかな層)対象ですが、やるからにはある程度深くこの世界を知らなければならないと思い、ビーガン、ベジタリアンと勉強していくと……本当に勉強することが多くて大変でした。そして、それをお客様だけでなく、店舗スタッフや店舗のオーナー様にも理解していただかなければならない。そのためにも、担当者である私がしっかりと理解し、わかりやすく伝えられなければならないと思い、今も勉強を続けています。

インタビュー中の上村さん。
『グリーンバーガー』開発の苦労を語りつつも、
自身の価値観の変化を楽しんでいるようだった

――ではこの『グリーンバーガー』は、短期的な売上などでは判断せず、継続的に販売をしていくということですね。

上村 そうです。『グリーンバーガー』はいわば、今日のモスフードサービスの企業姿勢を示すものです。国際社会では、間違いなくフードダイバーシティ、SDGsの方向に向かっていますから、ファストフードチェーンのなかでいち早く健康や環境重視を掲げてきた弊社としては、いち早く商品化し、そして継続していくことが重要だと考えています。

 開発者としては、別の味付けの『グリーンバーガー』や、動物性食材や五葷不使用のサイドメニューにも挑戦したいです。まあでも、ファストフードなので、あまり敷居を高くしすぎず、気軽に食べられる商品開発を意識していきたいと思います。

――最後に、この商品を開発して、ご私自身にも変化はありましたか?

上村 はい、相変わらずお肉は食べていますが(笑)、オーガニック、サステナブルといった世界にも興味が出てきて、この「キチラブ」のようなメディアを意識的に見るようになりました。仕事の一環ではあるものの、プライベートでもビーガン、ベジタリアンのお店に行ったり、商品を買ったりするようになりました。でも、今でもモスの中で一番好きな商品は「テリヤキバーガー」です(苦笑)。

  • 株式会社モスフードサービス

    住  所:東京都品川区大崎2-1-1 ThinkParkTower 4階

    店舗数:1261(2021年2月末現在)

    公式サイト:https://www.mos.jp/

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