vol.10 「2025年秋ドラマレビュー」
秋ドラマが始まってからずいぶん経った。本当は『第1話でだいたいわかる』というタイトルなので、第1話終了時点で書くべきだった。もう半分ほど終わってしまったが、今はTVerなどで見逃したドラマをあとからでも無料で追いかけられる。つくづくいい時代になったと思う。
今期、追いかけてでも見逃せないドラマを紹介しよう。食に関するドラマではなく、キチラブ的ではないと思うものもあるが、そこは大目に見てもらいたい。
文:板倉京一
月曜日
まずは月曜日。フジは月9ブランドや草彅くんの「僕シリーズ」に通じるカンテレドラマ『週末のロンド』で月曜をものにしたかったと思うが、いかんせん脚本が弱く、あまりオススメできない。
ここは深夜の『シナントロープ』を推したい。テレビ東京の深夜23時すぎからの時間帯とは思えない豪華なキャスティング、先の読めないストーリーでハマる人続出のドラマ。主演は水上恒司。ハンバーガーショップ「シナントロープ」を舞台に男女8人の若者の青春群像ドラマ。ヒューマンドラマであり、サスペンス、恋愛、ファンタジー、犯罪ものがごっちゃ煮になったこのドラマの脚本は漫画家でもある「オッドタクシー」「セトウツミ」の此元和津也。
バーガーショップの面々に山田杏奈、坂東龍汰、影山優佳、望月歩、鳴海唯など。他にも染谷将太やMOROHAのアフロも出演していて見逃せない。離れたシーンを台詞で繋ぐなどテンポの良さが際立っている。ちなみにタイトルのシナントロープとは、人の生活圏で生息し人工物を利用して暮らす野生生物の総称。
火曜日
続いて火曜日。世間的には『じゃあ、あんたが作ってみろよ」が話題だが(朝日新聞のドラマ座談会でも期待度No.1)、主人公がすぐに反省するこのドラマより、ラテ欄でドラマのタイトルより脚本家の名前を上に書く『ちょっとだけエスパー』を推したい。
今どき脚本家の名前でそこまで視聴者の目を引くのはクドカンか三谷幸喜くらいだと思うのだが、TBSは強気ですねー。野木亜希子の名前を一般の視聴者がどれだけ知っているんだかと思うが、タイトルの上に野木亜希子脚本と載せている。
ご存じない方のために念のために言っておくと、彼女がブレイクするきっかけとなったのは「逃げるは恥だが役に立つ」いわゆる「逃げ恥」。その後「アンナチュラル」でその地位を不動のものとし、「MIU404」や映画「ラストマイル」、WOWOWのドラマ「フェンス」日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」など、社会問題とエンターテインメントの両立を常にやってこられた方だ。
その野木亜希子が万を持してSFがやりたいと言って実現したのがこれ。主演は大泉洋。ヒロインの宮﨑あおいが信じられないほど可愛い。今後どうなっていくのかまるで読めない。世界をよくするため、ちょっとだけエスパーの能力を使って目覚ましを5分早めたり、傘を持たせたり、携帯の容量を無くしたりするのか? 人を愛してはならないというエスパーのルールは本当なのか? 今はいい人のように出ている兆社長が本当は黒幕だったりしないのか?
水曜日
そして水曜日。脚本家で有名な(視聴率を見込める)のは、今はこの人とクドカンだろう。三谷幸喜だ。今期地上波にクドカンのドラマは無いので、この三谷作品に期待が寄せられたのはわかる。『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』だ。みんなが見たいものを作るのではなく、三谷幸喜がやりたいことをやる。1980年代の渋谷を舞台に、シェイクスピアを上演する話。ここで断っておきたいが、三谷幸喜は舞台と違ってテレビではメガヒットは少ない。「古畑任三郎」や「王様のレストラン」の印象が強いが、人気者になってからも「龍馬におまかせ!」や「総理と呼ばないで」「今夜、宇宙の片隅で」と、大河以外はそんなに大きな話題作は無いのだ。なのでこのドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』も豪華なキャステイングだし、金がかかっていそうと思って観ていれば損はしない。
忙しいのにそんな大して面白くも無いものに付き合ってる暇はないよっという方は日テレの『ESCAPE それは誘拐のはずだった』をオススメする。桜田ひよりと佐野優斗のW主演で、誘拐事件のはずがハチとリンダとして一緒に逃亡をすることになるという話。警察にもハチの親にも追いかけられて、毎回絶体絶命になりながらもそれを切り抜けていく逃亡劇は、原作が無いだけに目が離せない。
木曜日
前半の最後、木曜日。時間帯はどうであろうが、面白そうであれば見逃せないが、このドラマが帰ってきたとは! 『緊急取調室』、通称キントリである。2023年6月に映画版が公開される予定だったが、いろいろトラブルが発生し、公開中止に。もうオクラ入りかと思われたが、再撮をするなどして今年の12月に日の目を見ることになった。それに合わせてシーズン5の放送開始。だが、映画版のサブタイトルが「THE FINAL」だから、もうこれが最後の可能性もある。脚本はベテランの井上由美子。
もう一人ベテラン脚本家の作品がある。岡田惠和の『小さい頃は、神様がいて』だ。主演は、地上波、ゴールデン・プライムタイムの帯ドラマでは初の主演となる北村有起哉。相手役は仲間由紀恵だが、第1話の最後で「子供が20歳になったら離婚する」という約束は今も生きていることを告げる。離婚を前提とした夫婦を中心にした3組の家族のシェアハウスの物語。岡田らしく悪い人は出て来ず、毎回ゆるい感動に包まれている。主題歌はユーミンの新曲。
時間帯はどうであろうが、と最初に言ったのは木曜の23時59分から日テレ系で放送中『推しの殺人』もついつい観てしまうから。いわゆる深夜枠ですごく面白いわけではないが、なんかついつい観てしまう。原作は「このミステリーがすごい!」大賞の文庫グランプリで、この賞自体にそれほど権威があるわけでも無いので、本当に大したことはないかもしれないドラマ。出ている人もイマイチなのだ。3人組アイドルがあやまって事務所の社長を殺してしまう。死体を隠蔽してアイドル活動を続けようとしたことにより、次々に問題が発覚。もう少し面白いといいんだけどと思いつつ、ついつい観てしまう一作。
今回はここまで。
次回は金曜から日曜まだの地上波ドラマを取り上げます。気になったドラマは今からでも見てみて!
2025年秋ドラマを見てみる(金曜〜帯ドラマ編)
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