vol.5「今夜すきやきだよ」
もくじ
原作は手塚治虫文化賞新生賞受賞の話題作!
「今夜すきやきだよ」って言われたら、めっちゃテンション上がりますよね。インパクトのあるこのタイトルは原作者の谷口菜津子さんが、「こんなラインが届いたらウキウキするだろうなと想像してつけた」とのこと。確かに〜。
このドラマの原作は、新しい才能を示した作品に与えられる手塚治虫文化賞新生賞の第26回受賞作、谷口菜津子の同名マンガです。
さすが新生賞というだけあって、目のつけどころが素晴らしいと感じた傑作でした!
そしてそのドラマ化である本作は……。
キチラブの誌面では「まだ第1話を観ていない」と書きましたがオンエアーより一足先に観させてもらいました!(テレビ東京さんありがとうございました〜!)
マンガ原作のドラマ化の理想形
いやー、面白かった。マジで好きです、このドラマ。
マンガを原作としたドラマは多いですが、本作はマンガ原作のドラマ化の理想的な形と言えるでしょう。
まず脚本が素晴らしい。原作の雰囲気を損なうことなく、話の順番を変えたりしてよりわかりやすく、テーマを明確にしています。
原作は元々がWebマンガということもあり、1話が10ページほどの短いものでした。今は単行本化されているので一気に読めますが、1話だけでは物足りない。なので、ドラマでは第1話にマンガ5話分くらいの要素を惜しげもなく入れています。だから第1話で基本設定が一気に理解できるようになっています。まさに“おいしいドラマ”は、第1話でだいたいわかる。
と言ってもストーリーだけを追うような薄っぺらなドラマではなく、登場人物の心情を繊細に描いているので、特に独身女性は共感するところが多いと思います。
さて、 気になる内容は? それはこんなお話です……。
正反対の二人だけど……
バリバリのキャリアウーマンの「あいこ」は売れっ子の内装デザイナー。素敵な恋人とは婚約中で、後輩たちからも一目置かれる存在です。
ところが、会社ではわからないけど、実は家事全般が苦手。
家庭料理や妻が家事をこなす「フツーの家庭」を望む彼氏とは結婚に対する理想が全然違います。
一方、恋愛感情を抱かないアロマンティックの「ともこ」。
家事が好きで料理が得意ではありますが、絵本作家としての仕事がスランプ気味で長い間新作が描けずに悶々とした日々を送っています。
担当編集者からは初心に戻って頑張ってとは言われますが、初心を思い出そうとすると、家事が得意というだけで「普通に結婚すればいいじゃん」「いいお母さんになるよ」と言われた嫌な記憶がよみがえり……。
こんな二人のアラサー女子が、高校時代の同級生の結婚式で久々に再会。
学生時代は特に仲が良かったわけでもなかったので、最初は気まずさがあったけど、一緒の帰り道、ついお互いが本音を話したことからなんだか気分が良くなったのでした。
二人の同居生活スタート!
さて数日後、偶然近所のスーパーで再会した二人はあることをきっかけに、ともこの家で手作り料理を食べることに。とてもショックな出来事を抱えていたあいこですが、一緒に美味しいものを食べることでどんどん浮かれた気分に! お互いのモヤモヤした気持ちがほぐれていきます。
そして、あいこが苦手な家事はともこが担当し、その代わりあいこは広くて快適な住まいを提供する……。二人は同居生活を始めることになったのです。
思わず作りたくなる料理の数々
こうして第1話で二人が同居に至る経緯がテンポ良く描かれます。
原作では何話かに分けられて描かれるその他の登場人物も第1話で紹介されます。
そして、映像ならではの最大の利点は登場する料理の数々がホントに美味しそうなこと! 8時間塩茹でした豚肉をレタスで巻いて食べる料理(原作にも登場)とすき焼きが第1話に出てきます。深夜にもかかわらず思わず作ってみたくなりそうです。
キチラブ読者なら美味しいものを食べることで幸せになれるってことをご存知なはず。それを実感できるドラマです。
いつか「こんな時代もあったんだね」と言われるように
普通って何? 結婚ってそんなに大事なこと?
ただ自分らしく生きていきたいだけの二人は、これから世間のフツーや当たり前とどう向き合っていくのでしょう? 次週が待ち遠しいドラマになりそうです。
原作者の谷口菜津子さんはコミックスの巻末でこんなことも言っています。「この作品はいつか『こんな時代もあったんだね』と言われるようになって欲しい」と。
そう、ここに描かれていることは、この多様化の時代になってもまだまだ多い偏見や固定観念に悩む二人の女性たちが前向きに生きていく姿です。
生きづらさを感じる二人には共感する人も多いでしょう。そして、それを乗り越えようとする姿はきっと観る人に元気を与えてくれると思います。
放送話によって変わるオープニング&エンディングにもご注目!
「あいこ」役には、ドラマや映画で大活躍の蓮佛美沙子。キャリアウーマンだけど、家事が苦手という人間味あふれる役をユーモアたっぷりに好演しています。
「ともこ」役は、モデル、女優、バラエティー番組でマルチな才能を見せるトリンドル玲奈がふんわりと癒し系の演技を披露してくれています。
1月6日(金)深夜0時12分スタート
このドラマは1月6日(金)の深夜0時12分から、テレビ東京系の「ドラマ24」枠で放送されます。
「ドラマ24」は、キチラブでも紹介した「きのう何食べた?」やSeason10にもなった「孤独のグルメ」、映画化もされた「バイプレイヤーズ」など、話題作満載の枠。本作もきっと話題になること間違いないでしょう。
【作品データ】
ドラマ24「今夜すきやきだよ」
2023年1月6日(金)深夜0時12分スタート(テレビ東京系)
原作:谷口菜津子 脚本:山西竜矢
監督:太田良 山中瑶子
主演:蓮佛美沙子、トリンドル玲奈
制作:テレビ東京/ザ・ワークス
©︎谷口菜津子・新潮社/「今夜すきやきだよ」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/konyasukiyakidayo/
ドラマウォッチャー:板倉京一
前回から1年以上も間が空いてしまいました。今年はいっぱい書けるように頑張ります!