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2024.03.26

人生を変えた菜食食材をオリジナルブランドとして世に出し広めたい

  • 「美味しい仕掛け人たち」Vol.19
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創業34年のベジタリアン食材の老舗メーカー「かるなぁ」。ホテル、居酒屋、弁当屋、スーパー、給食、病院などへのベジタリアン向け業務用食材の供給から、ベジカフェ、自然食レストランの経営とその業務内容は全国的で多岐に渡っている。それを一手に仕切っていると言っても過言ではない人物が専務取締役の余語啓一さんだ。
なんと、もともとはアンチベジタリアンだったという彼。何やら興味深い話が聞けそうだ。

文:板谷 智

オリジナルのヴィーガン食材の仕掛け人

株式会社かるなぁ 専務取締役
日本プラントベース市場協会 理事長 NPO法人日本ヴィーガン協会 理事
日本ヴィーガンアワード審査委員長  NPO法人 ユーアイクラブ顧問
余語 啓一さん Keiichi Yogo

1967年(昭和42年)愛知県名古屋市に生まれる。ヴィーガン・ベジタリアンフードを専門に製造卸、小売販売する㈱かるなぁを通じて菜食食材の普及につとめるとともに、長年の菜食を実践するうえで感じた菜食の効用(健康、環境、精神)をひろめる講演活動や、行政機関や企業などから依頼をうけてプラントベースメニュー作りセミナ-やインバウンド対応セミナーなどを実施。大手食品メーカー数社ともプラントベースフードの共同開発など手がける。

▲エビもどきがプリプリ食感の精進エビシュウマイ

自らの体験がべジタリアンへの道へ進ませた

 「祖母がベジタリアンだったこともあり、両親もそのネットワークに加わり、当時からあった大豆ミートの業務用食材を共同購入したり、情報を交換したりというコミュニティができていき、どんどん口コミで広がっていきました。それがかるなぁの前身で、だんだん会社にしていきました」。
 コミュニティのメンバーが平成元年に創業したのが「有限会社かるなぁ」だという。

 「我が家ではベジタリアンの食事ばかりだったので、小学5年の時、友だちの誕生日会で初めて焼肉を食べた時、カルチャーショックを受けました。それからというもの、うちの食事が嫌で、当時全盛のファーストフードばかり食べるようになりました。実はアンチベジタリアンだったんです」。

 「ところが、22歳の時、白血病という大病に罹り、治療のみならず、その副作用が最悪でした。藁をも掴む思いで頼ったのが食事療法。ベジタリアンに切り替えました。そしたら見事数値が回復していったのです」。
 その後、再発を恐れたこともあり、ベジタリアンを続け、環境問題や動物愛護の観点からもヴィーガンに関心が向いたそうだ。

▲大豆ミート入り蓮根しゅうまい

かるなぁのシュウマイはもはや定番商品

 「もともとベジタリアン食材のネットワークから始まっているので、そのメンバーたちのレシピがありました。だんだん会社としてやっていく中でお客様から要望をいただいたり、製造途中にこういうのもいいなとどんどんメニューを増やしていきました」。

 「私が正式にかるなぁに入ったのが32歳の時で、そこから株式会社となり、商品開発を積極的に行いました」。
 創業34年を迎える「かるなぁ」は、ヴィーガンとしての基準を満たしている商品数が、NB商品も加え、いまや1,000アイテムを超えるという。調味料から惣菜品、ドリンク類まで多岐に渡る品揃えだ。

 「今回ご紹介する『大豆ミート入り蓮根しゅうまい』も『精進エビシュウマイ』もヴィーガン対応ですが、ずいぶん前に開発し、今も売れている定番商品となりました。蓮根は食感が良く、大豆ミートとの相性もいい。
 精進エビシュウマイは台湾で作られたこんにゃくや大豆ミートを使ったエビもどきが入っています。さらに玉ねぎやニンニク、ニラといった匂いの強い五葷野菜を避け、精進料理の食材に徹しました。どちらもガッツリ肉が食べたいという方にはちょっと期待外れかも知れませんが、ヴィーガンシュウマイの優しさを味わっていただけたらと思います」。

▲エビも肉も使っていないヴィーガン対応のシュウマイ


人との出会いが背中を押してくれた

 ここまで余語専務が自然食にこだわるのはある人との出会いが大きかったという。それは自然食品店から始め、唯一無二の「自然食の企画販売」を手掛ける「株式会社 黒怒」の創業者・佐野正則会長(当時社長)だ。
 当時は食品添加物をあまり気にしていない人が多かったので、「かるなぁ」も原材料があまり良くない台湾などからの輸入商品を多く扱っていた。だが、佐野会長から自然食のノウハウを教えてもらい、それからは国産大豆にこだわったり、添加物はなるべく使わないという商品作りにシフトしたそうだ。

 レストランやショップなども多角的に展開している「かるなぁ」、しかし今後も日本全国にヴィーガン食材をお届けし、その普及に貢献したいとのこと。
 シュウマイや餃子は食卓の色取りに必要不可欠。中華料理でもベジができるとアピールしたいと胸を張る余語さんは、まるでアンチベジタリアンだった小学生の時の自分に言い聞かせるようだった。

▲名古屋にある株式会社かるなぁ本社



→「Kitchen Love the Earth」第25号本誌情報はこちらから 

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