酒蔵でありながら、有機農場を作った仕掛け人
天鷹酒造株式会社 蔵元
天鷹オーガニックファーム株式会社
代表取締役 尾﨑宗範さん Munenori Ozaki
栃木県北の人口5,000人の小さな村に生まれ、豊かな自然の中で育つ。1996年より「米作り酒造りの会」を20年間主催する。有機JAS法制定を機に、有機について勉強を始め、2005年に有機認定事業者となる。2014年EU及びアメリカの有機認証取得。2017年第105回全国新酒鑑評会にて、有機日本酒として初の金賞を受賞。2018年天鷹オーガニックファーム㈱を設立、蔵人による有機米の生産を始める。
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「お酒ほど安全な食品はない」。創業107年の老舗酒蔵天鷹酒造株式会社三代目の尾﨑社長は言い切った。
天鷹と言えば、有機日本酒で国内外問わず数々の賞を取る有機日本酒の代表的酒蔵だ。
日本酒には確かに賞味期限がない。アルコールだから細菌も繁殖しない。有機じゃなくても安心安全と言えそう。
では、なぜ有機なのか? 尾﨑社長にお話を伺った。

有機を始めたのは、級別制度の廃止がきっかけ
尾﨑社長に有機を始めたきっかけを聞くと、昭和63年に国が決めた日本酒級別制度の廃止だと言う。それまで当たり前にあった「特級」「一級」「二級」の区別が無くなり、消費者も戸惑ったが酒造メーカーはもっと大変だった。そこで、なんとかしようと地元の酒屋さんたちと勉強会を開くことになった。日本酒のテイスティングからラッピングやポップの描き方まで専門家を招いてやった。
そんななか、たまたま出会った3人の酒屋さんとの話が運命を変えた。
「オリジナルを作りたい。どんな酒がいい?」 という話から、地元栃木にこだわろうということになった。
地元は相当な田舎。だけど、自然が素晴らしい。ここなら旨い酒を作るための美味い米が作れる。そうして、「米作り酒造りの会」が始まった。
最初の質問に戻ろう。なぜ、有機なのか。
「米作りに適した環境があって、いい米を作る農家さんがいたんです。妊娠した女房がいたら何を食べさせますか? できるだけいいものを、という話に必ずなります。それと、未来の子どもたちに自然を残したいという思いもあります」。
「有機のお酒は基本的に3つのやさしさでできてるんですよ。『口当たりがやさしい』『身体にやさしい』『環境にやさしい』。有機にこだわりたいんじゃなく、結果的にそういういいものができ上がったということなんです」。

なぜ、自前の農地を持つことにしたのか?
天鷹は2018年に天鷹オーガニックファーム株式会社を設立させている。会社として自分たちで農業を始めたのだ。
「田んぼを有機へ転換して収穫するまでには3年かかるんです。だけど、3年後の酒の需要予測は立てられない。しかし、一度農家さんと約束した田んぼは毎年全量買い取る責任があります。田んぼを一枚増やすということは、大変なリスクなんです。でも、自前でやれば作付けしない自由があるので調整できます。それに加え、自分たちで作ることで、米作りの研究データが蓄積され、酒造りに反映できるなど、メリットも大きいんです」。

今後も地元栃木にこだわる
今後も天鷹は、地元での米造りを広げていきたいと、尾﨑社長は言う。
どうやったら自然環境に負荷をかけず、効率的な農業ができるかを追求します。そして、「農家という職業が高収入な職業になるように、うちがモデルとなって、いずれ日本中に広がったら、そんな嬉しいことはない」と語った。
さらに、クラウドファンディングやSNS を積極的に取り入れたことを若いチームがやっている。そのあたりは自由にさせているようだ。
「私も今考えると、先代がよくあんなに好き勝手やらせてくれたなぁと思います。勉強会とかに結構お金もかかってましたし」。
どうやら天鷹には若い者に自由にチャレンジさせる風土があるようだ。実は修行に出ていた4代目が今年の春、山形の酒蔵から帰ってきたそうだ。
尾﨑社長曰く「代替わりは変化のチャンスです」。今後の天鷹はますます空高く羽ばたきそうだ。
文:板谷 智

天鷹酒造株式会社
〒324-0411 栃木県大田原市蛭畑2166番地