vol.11 「2025年秋ドラマレビュー」
今期、TVerなどで追いかけてでも見逃せないドラマを紹介するコーナーの第2弾。
早速金曜日以降を見ていこう。
文:板倉京一
金曜日
まずは金曜日。テレ東の『コーチ』も悪くないと聞くが、追いかけたいのは『フェイクマミー』。バリバリのキャリアを持つ転職中の花村薫(波瑠)は、ひょんなことから元ヤンのシングルマザー日高茉海恵(川栄李奈)の代わりに茉海恵の娘の小学校の面接を受けることに。身代わり受験で母親になりすましてお受験してしまう花村薫。バレたら犯罪であるこの契約の行く末は? 軽いコメディと思って観始めたら、さまざまな要素てんこ盛りで目が離せない。それもそのはず第1回「TBS NEXT WRITERS CHARENGE」大賞受賞の園村三が脚本を担当。監督もTBSドラマ初参加のジョンウンヒ。偽ママがバレそうになったり、意外な人が敵になったり、逆に意外な人が味方になったり。先が読めない。
土曜日
続いて土曜日。いきなり水川かたまりがマンションから転落死するところから始まる衝撃の考察ミステリー 『良いこと悪いこと』は、小学6年生がタイムカプセルとして埋めた「将来の夢」の絵と卒業アルバムにちなんで同級生が次々殺されていく。その謎を、クラスメイト役の間宮祥太朗と新木優子が犯人探しをするドラマ。これも原作なしのミステリーなのでSNSでさまざまな考察合戦が巻き起こっている。今のところ筆者には犯人の目星がまったくつかないが、ヒロインの新木優子が小学生時代にいじめを受けていたというのがミソ。主役の間宮祥太朗はそのいじめの首謀者側のガキ大将だというのが面白い。森本慎太郎や剛力彩芽、木村昴らが同級生だが、工藤阿須加や松井玲奈は水川かたまりと同じく、もう殺されてしまった同級生だ。最後に犯人がわかった時、なあんだってことにならないことを祈りたい。
土曜はさらにもう1本、『パパと親父のウチご飯』も挙げておきたい。シングルファーザー役の松島聡と白州迅がルームシェアをしながら子育てに奮闘する話だ。今をときめくtimeleszの松島聡が主演で新しいメンバーの猪脵周杜も新人整体アルバイトをやっていてファンは注目。キチラブ的には子供たちに料理を作るシーンが毎回あり、料理の先生として蓮佛美沙子が出ているのも見逃せない。
日曜日
日曜日はドラマ枠が増えたが、今期はやはり『ザ・ロイヤルファミリー』が面白い。税理士・栗須栄治はあることをきっかけに大きく挫折してしまうが、馬主・山王耕造と出会ったことで競馬の世界の入ることになる。競馬を馬主という立場から描き、20年にもわたる壮大な奇跡の物語を生み出した意義は大きい。早見和真の同盟原作小説はあるのだが、それより面白いと評判である。テンポ良く毎回レースシーンを最後の山場にしていることや実力・人気を兼ね備えた豪華出演者を惜しげもなく投入しているせいか。やはり日曜劇場はこうじゃなくちゃいけないと感じる。地上波と思えない製作費を使った贅沢なドラマで、「よし、明日からも仕事を頑張ろう!」という満足度が欲しいのだ。
もちろん大河ドラマにもそういった期待は込められる。『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』はその期待に十分応えていると言える。まったく戦がない時代にもかかわらず、さまざまな生き様が描かれ、飽きがこない。今の時代と繋がっているところも見受けられ面白い。
帯ドラマ
最後に毎日やっている帯ドラマを紹介しよう。
まずは連続テレビ小説『ばけばけ』だ。日本文化をこよなく愛し、「怪談」を後世に残したラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の妻セツをモデルにした話で、主演は高石あかり。
彼女は2年前の夜ドラにも準主役で出ているのでNHKに認められているのかなとも思うのだが、なんといっても代表作は昨年連ドラにもなった「ベイビーわるきゅーれ」シリーズだろう。映画は昨夏公開の作品までに3本作られている人気シリーズだ。彼女はアクション女優ばりのアクションで、主役の殺し屋ちさと役を演じている。
話を『ばけばけ』に戻そう。脚本のふじきみつ彦は本格的な連ドラの経験より、コントや30分くらいの短いドラマで知られる。そのせいか、『ばけばけ』もコントのようなシーンが多い気がする。2年後の朝ドラの脚本にバカリズムが抜擢されたが、NHKはNHKのドラマ=堅物を壊そうとしているのか? とにかく朝から笑えて考えさせられる朝ドラである。主題歌は紅白に初出場が決まったハンバートハンバートで、最初に「日に日に世界が悪くなる」と始まる。すごく後ろ向きに思えるが、最後にはそんな世界でも「君とふたり歩くだけ」と夫婦愛の話になっていく。今はまだお互いにそんな気はなさそうだが、これからどうなっていくのか楽しみである。
続いて夜ドラ『ひらやすみ』。これまた名作の香りがする。原作は真造圭伍の漫画だが、数々の賞を受賞し、国内外で高い評価を受けている。主人公は釣堀でバイトする29歳のフリーター生田ヒロト。岡山天津が演じている。木造一軒家を受け継いで住んでいるが、この春から芸大に通うイトコのなつみちゃんが同居することになった。なつみちゃんには映画「秒速5センチメートル」のピュアな女子高生も記憶に新しい森七菜。彼女は観る作品ごとに違う魅力を提供してくれる稀有な女優だ。ドラマチックな展開もない何気ない話なのだが、癒されること間違いなし。夜ドラは前作『いつか、無重力の宙で』も傑作だったし、毎日ながら15分ずつというのも観やすいので、このままずっと続けて欲しいと思う。
今期の見逃せない連ドラを紹介してきたが、もう次のクールの情報が入ってきた。面白そうなものもたくさんあるが、とりあえず第1話を観てから紹介したいと思う。
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