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2025.11.21

木桶とは?発酵文化を未来へつなぐ職人たち

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【第1回】木桶の魅力

はじめまして、sonoです。
「おいしさとは何か」。その問いを探るため、調味料メーカーや流通領域で、品質管理・官能評価・機器分析に携わってきました。
分析やテイスティングを重ねるほど、数値では語りきれない“味わい”があることに気づき、私はつくり手の現場へと向かうようになります。
その旅の途中で出会ったのが、何世代にもわたり醤油や味噌を育て続けてきた木桶でした。

大豆・小麦・塩というシンプルな素材から生まれる、驚くほど複雑で奥行きのある味わい。それが、100年以上も前に作られた木桶で醸し続けられているということ。代々続く蔵の中で、人の手で仕込まれ、蔵や木桶に棲む微生物たちとともにゆっくり発酵し、時を重ねながら蔵ごとの個性が育っていく。

それまでは分析の世界で「数値でおいしさを測る」立場にいましたが、木桶で醸された味わいには、分析だけでは語りきれない豊かさと深みがあり、その世界にすっかり魅了されていったのです。

木桶とは、まっすぐで節の少ない杉板を組み、竹の箍(たが)で締めた容器。江戸時代から昭和初期にかけて、味噌や醤油、日本酒などの醸造に使われ、日本の発酵文化を支えてきました。
しかし、近代化の波とともにステンレスやプラスチック製の容器が普及し、木桶の姿は急速に減少。今では、木桶仕込みの醤油は全体のわずか1%といわれています(※)。

木桶醤油の生産量1%の根拠(職人醤油HPより) 

しかし、近年再び木桶への関心が高まっています。長く使い込まれた木桶の内部には微生物が棲みつき、蔵ごとに異なる味わいを育みます。その土地の気候風土・時間・そして人の手、自然と人がともに紡いできたもの。その魅力に注目する人が増えているのです。

木桶に使われる吉野杉は樹齢100年以上。木桶になってからも100年以上使い続けられます。500年の歴史をもつ吉野林業、山を守る人、木を選ぶ職人——木桶には何世代にもわたる人々の技術と想いが宿っています。

今、この木桶文化を未来へとつなぐために、全国の職人や蔵元、研究者たちが動き始めています。古い桶を修復したり、新しい桶を自分たちでつくったり。かつて当たり前にあった木桶文化を改めて見直し、技術を繋ぎ、新しい動きが生まれています。

次回は、失われかけた木桶文化に再び活気をもたらしている「木桶職人復活プロジェクト」についてご紹介します。

岐阜県の山川醸造さんが、「木桶とたまりの文化を伝えたい」と始めたクラウドファンディングのページにも、木桶を使う蔵元からの木桶文化への想いが綴られています。こちらもご覧いただけると嬉しいです。
木桶とたまりの文化を絶やしたくない。山川醸造の「新桶導入」プロジェクト

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